第1回
弁護士法人カイロス総合法律事務所の時事問題、質疑応答コーナー(本質疑応答の文責は、弁護士法人カイロス総合法律事務所代表弁護田邊勝己にあります。)
今回は、日産自動車カルロス・ゴーン元会長が保釈中に逃亡したニュースについて聞いて行きます。
ゴーンの逃亡について、誰の責任なのかと、色々な意見がありますね。
誰の責任かというのは難しいですが、東京地検特捜部があれだけ反対したにも関わらず、保釈決定した裁判所の責任が一番大きいと思います。裁判所は、人質司法とか日本国の司法制度と根拠なく批判して被告人をパスポートを保持させるとかの甘い条件で保釈してしまった責任は大きいです。世間知らずの面が出てしまいましたね。世の中、いや世界にはとんでもないワルがいることを検察は知っています。特捜部が手がけた事件で検察が絶対に保釈するなと反対していることには根拠があると考えるべきです。
ゴーンの逃亡で弁護人の責任はないのですか。
弁護人が逃亡に協力していれば別ですが、そうでない限り責任はないですね。
しかし、今回、東京地検特捜部が保釈にかなり反対したにも関わらず、弁護人がパスポートを預かるとかの色々な条件をつけて保釈させたことが、逃走につながっていて、無理な弁護だったのではないですか。
確かに、東京地検特捜部の判断が正しかったことになります。しかし、弁護人が依頼者のために諸種の工夫を凝らして保釈を取ったこと自体は問題とは言えません。
弁護人は被疑者とかなりの意思疎通をすると聞いています。罪の告白を受けることもあるのでしょう。それが、ゴーンが逃げる気でいたことは気がつかなかったのでしょうか。
その点は、私の経験からすると、沢山の突っ込んだ会話の中から、気配を感じることが多いですね。
逃げる可能性を感じながら、保釈請求を通したのは問題だと思いますが、どうですか。弁護士法人カイロス総合法律事務所代表弁護士の田邊勝己弁護士から回答して頂けますか。
感じていたかどうかですね。
弁護人は、ゴーンが逃げた後の記者会見で気持ちが分からないかというとそれば別問題と話しましたね、また、別の弁護人は密出入国を非難できないとかブログに書いたそうですが、逃げる気があると察知していたのではないですかね。弁護士法人カイロス総合法律事務所代表弁護士の田邊勝己弁護士から回答して頂けますか。
それは推測ですね。事実がどうだったのか興味はありますね。
弁護人はパスポートのひとつを鍵のついた箱にいれて、ゴーンに持たせていたというのですが、それは甘くないですか。
鍵付きの箱と言っても壊せば開けられるので、パスポートを持たせているのと同じですね。これを認めた裁判所が問題だと思います。何故、検察に全部預けさせなかったのか。裁判所の決定ならできたのではないかと思います。
ゴーンが逃げるのではないかと日産側は考えていて、私立探偵(調査会社)に監視させていたそうですが、弁護人がこの探偵社に告訴すると抗議して、監視が外れたその日に逃亡していますね。あまりに出来すぎのタイミングではないですか。
弁護団が逃がすために抗議したかどうかは、神のみぞ知るで何とも言えませんね。通常はあり得ないでしょう。
東京地検特捜部が弘中惇一郎弁護士の事務所を家宅捜索したそうですが、弘中弁護士はゴーンの使っていたパソコンの提出を拒否したそうですね。そんなことは出来るのですか。
弁護士事務所には依頼者の秘密に関わる沢山の資料が保管されています。弁護士には職務上の正当行為として守秘義務があります。守秘義務を根拠として提出を拒むことはできます。
過去、弁護士事務所に家宅捜索が入ったことはあるのですか。
私の経験でも沢山あります。有名な国会議員兼弁護士の事務所や元検察官の弁護士事務所に入ったこともあります。
今回は、前回に引き続き逃亡者ゴーン被告人について聞いて行きます。
ゴーンは日本の司法制度を批判していますが、この点どうでしょうか。
そもそも逃げた人間に批判する資格はないと思います。自信があるなら逃亡しないでしょう。
日本の司法制度は弁護士の立場から見てゴーン被告人に批判されるような問題があるのでしょうか。
諸外国と比べても日本の司法制度ほど人権が守られている制度はありません。東京地検は、「我が国の憲法及び刑事訴訟法においては、例えば、被疑者の勾留は、厳格な司法審査を経て法定の機関に限って許されるなど、個人の基本的人権を保障しつつ、事案の真相を明らかにするために、適正な手続きが定められている。」との声明を発表しています。全くその通りであり、しかも、全ての被告人に公正な裁判を受ける権利が保障されているのです。弁護士としては、他国のように人権が保障されていない国と違うのにイデオロギーで反権力的思考をするのは、かえって、被疑者、被告人のためにならないというプロとしての分析をしています。
我が国でも適正は裁判を受けることができるのですか。
当然です。我が国の憲法は世界に比類のない人権を擁護している内容の憲法です。私たちは自由に発言することができるし(表現の自由)、自由に政治活動ができるし(政治活動の自由)、自由に宗教を信じることができます(信教の自由)。こんなに自由な国は世界でもあまりないのです。その憲法が最大の価値としているのが個人の尊厳なのです。その憲法の下での司法制度がゴーン被告人の主張するような制度であるはずがないのです。
人質司法と言われていますが、どうでしょうか。
全くあり得ない話です。刑事訴訟法では。。。
人質司法という意見は弁護士業界の中でも有力な見解なのではないですか。
そうです。人質司法と叫ぶこともまさに表現の自由で守られているのです。一部の弁護士の主張する見解です。有力かどうかは分かりません。そして、一部の弁護士の政治的な偏見だとしても、その意見を表明することが許されているし、裁判でも主張できるのです。すばらしい司法制度ではないですか。
ゴーン被告人は日本では有罪はあらかじめ裁判の前に決まっているということを言ってますが、どうですか。
日本の裁判制度は、中世のヨーロッパの予審制度の名残である裁判官が捜査して裁判官が起訴して裁判官が判決する制度が残っているフランスなどと違い、捜査起訴するのは検察で裁判所は起訴状に書いてあることしか事前の情報がないという制度を取っています(起訴状一本主義)しかも、起訴後は弁護士が自由に弁護活動ができます、従って、本当に公正、公平な裁判が期待できるのです。最初から有罪が決まっているということはありません。
逮捕勾留は恣意的に行われているのでしょうか。ゴーン被告人は日産内部のクーデターに検察と日本政府が加担したと主張しているようですが。
逮捕勾留をするためには、検察は起訴して有罪にできなければ意味がないわけですから、起訴とその後の裁判に耐えうるだけの客観的証拠があるのかどうかを厳格に審査しています。厳格に審査して有罪の見込みについて高度の蓋然性があると判断できるものだけを検察内部の厳重な決済制度の中で判断しています。従って、やみくもに逮捕したり、勾留したりすることはできません。まして恣意的に民間企業クーデターなるものに検察が加担する意味などありません。噴飯ものの主張と言えます。しかも、逮捕も勾留も検察官の請求を裁判所が公平、公正に審査して裁判所が決定しています。検察だけではできないのです。
そのような厳密な司法制度だとすると、ゴーン被告人の有罪はある意味予想されていたということですか。
はい、最初から決まっているのではなく、厳密な審査を経ているから有罪になる確率が高いのです。日本は99、9パーセント有罪だと批判されていますが、先ほど述べたように裁判になるまえに厳密に何重にも多数の法律の専門家が審査して、有罪の確率が高いものだけを起訴していますから、有罪率が高いのは当然のことなのです。反面、その前の段階で無罪とされている人が多いということも言える訳で人権が守られているのです。
冤罪の可能性はないのですか。冤罪事件が過去マスコミで報じられ、警察や検察の捜査の手法が批判されたりしていますよね。これまで問題があった事件もあるのではないですか。
人間のやることですから、完璧はないですよね、我々は間違いを起こします。だからこそ、間違いが起こらないように戦後まもなくから試行錯誤しながら現在の司法制度の実務が形成されてきているのです。間違いが起こったのは極少数の例外の事件です。例外をもって、普遍的な議論にすべきではないです。その意味でもゴーンの主張は全く的外れです。このような思考方法を採る弁護士も反省すべきです。
あなたの事務所は無罪を勝ち取ったことはあるのですか。
はい、無罪を勝ち取ったこともあります。無罪になる前に、被疑者段階で不起訴を勝ち取った事案は多数あります。起訴後に無罪を勝ち取った経験を有する弁護士は少ないと思います。我が弁護士事務所の金星です。
当弁護士事務所の弁護士は元検察官の刑事事件の専門家が多数います、また警察OBの顧問も多数います。無駄に争わないで、認めた方が罪が軽くなることもあるのです。刑事事件の素人の弁護士に相談する前にプロの私たちに安心してご相談下さい。
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